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- 日帰り全身麻酔手術
「日帰り手術なのに全身麻酔?」
鼻・副鼻腔の手術では、鼻の奥の狭い空間で内視鏡を用いて細かな操作を行います。
当院では、手術の内容や患者さんの状態に応じて、局所麻酔または全身麻酔を選択しています。
全身麻酔では、手術中は眠っているため、痛みや手術に対する不安・恐怖を感じることなく手術を受けることができます。
もう一つの大きな特徴は、手術を行う耳鼻咽喉科医とは別に、麻酔科医が患者さんの全身状態を管理することです。
手術中は心電図、血圧、血液中の酸素濃度、呼吸、体温などを継続して確認し、患者さんの状態に合わせて麻酔の深さや呼吸・循環を調整します。
〇耳鼻咽喉科医:鼻・副鼻腔の手術に集中
〇麻酔科医:患者さんの全身状態を見守る
それぞれが専門の役割を分担して手術を行うことが、全身麻酔手術の大きな特徴です。
なぜ鼻・副鼻腔の日帰り手術を全身麻酔で行うのでしょうか?
鼻・副鼻腔の周囲には、眼や頭蓋底(脳の土台となる骨)などの重要な構造が隣接しています。
特に内視鏡下鼻副鼻腔手術(ESS)では、内視鏡で拡大した術野を確認しながら細かな手術操作を行います。また、好酸球性副鼻腔炎など病変が広範囲に及ぶ手術や、鼻中隔前方の強い弯曲を矯正する内視鏡下鼻中隔手術Ⅲ型、外鼻の変形を伴うⅣ型などでは、より繊細な操作が必要となります。
局所麻酔で行える鼻の手術もありますが、痛みや不安によって患者さんが動いてしまったり、途中で手術を簡略化したりする必要がないことも、全身麻酔を選択する大きな理由です。
当院では、手術の内容、患者さんの年齢や全身状態、ご希望などを総合的に考慮して麻酔方法を決定します。
麻酔科医が説明する全身麻酔
全身麻酔を「飛行機のフライト」に例えると
全身麻酔は、「薬を入れて眠らせ、手術が終わったら起こす」だけではありません。麻酔の導入から覚醒まで、患者さんの状態は刻々と変化します。
当院で麻酔を担当する麻酔科医が、全身麻酔を「飛行機のフライト」に例えて説明いたします。
1. まずは「離陸」― 麻酔の導入
点滴から麻酔薬が入っていき、患者さんは「少し腕がしみるな」と思っているうちに自然と眠くなります。飛行機ほどたくさんの計器はありませんが、心電図・血圧・心拍数・呼吸回数・体温・血液中の酸素濃度や、吸気・呼気中の酸素・二酸化炭素・吸入麻酔薬の濃度などの多くのモニターがあります。これら数字や波形で表示される情報の他に、皮膚の状態、心音、呼吸音、点滴の量や速さなどを常に観察します。そして十分に眠った状態で呼吸を安全に維持するための管を口から入れて安定させます。
2. 「水平飛行」― 手術開始
麻酔開始直後の呼吸や血圧が不安定な時期を経過すると、患者さんの状態は落ち着いてきて安定します。飛行機で言うと水平飛行になっている状態です。落ち着いた状態になってきたことを確認してから手術を開始します。
3. 手術中
患者さんの状態が一定の時でも、麻酔科医はあらゆるモニターの変化に注目しています。手術の経過や出血量、麻酔の深さや患者さんの変化など、刻一刻と変化する状態を見落とさずに注意深く観察しています。心拍の乱れや血圧の上昇など「乱気流」がおこる時もありますが、その時も十分な知識を持って適切な対処をして常に安全な状態を保ちます。手術中は手術室から離れず患者さんの側らについて医療行為を行っています。
4. 「着陸態勢」― 手術終了へ
手術終了が近づくと着陸態勢に入ります。麻酔薬の量を手術終了した後すぐに目覚めるように調整していきます。
5. 「着陸」― 手術終了、リカバリー室へ
気管に入って呼吸を管理している管を抜いて(着陸)、全身状態が落ち着いた時点(滑走路からターミナルに到着してベルトサインが消える)で麻酔終了です。
手術を行う医師が内視鏡を持って鼻の中の手術をしているとき、同時に患者さんの心臓の動き具合や呼吸の様子を観察することはなかなか大変です。 パイロットが操縦室にいながら客室のモニターをみたり乗客に応対したりするのと似ているかもしれません。 手術を行う医師が手術に全力を注ぎ、安全に手術を終えることができるまで、麻酔科医が患者さんの苦痛を無くして全身状態を見守る、タッグを組んだ手術、これが全身麻酔手術の特徴といえます。
日帰り全身麻酔 Q&A
Q. 全身麻酔からちゃんと目が覚めますか?
はい。手術の終了時間に合わせて麻酔薬を調整し、手術が終わると徐々に目を覚ますように麻酔を管理します。
自分で十分に呼吸できることや意識の回復などを確認したうえで、呼吸を管理していた管を抜きます。
目が覚めた直後は眠気やふらつき、のどの違和感、吐き気などが残ることがあります。そのため、目が覚めたらすぐに帰宅するのではなく、リカバリー室でしばらく休んでいただく必要があります。
Q. 手術が終わったら、すぐに帰宅できるのですか?
目が覚めてからリカバリー室でしばらくお休みいただき、安全を確認してからご帰宅となります。
当院では、リカバリー室にて以下の項目を確認します。
・意識が十分に回復しているか
・呼吸や血圧などの全身状態が安定しているか
・強い吐き気や痛みがコントロールされているか
・鼻からの出血に問題がないか
・安全に立ったり歩いたりできるか
これらを確認し、「日帰りで安全に帰宅できる状態」になったと判断してからご帰宅いただきます。
Q. 全身麻酔に副作用やリスクはありますか?
医療行為である以上リスクはゼロではありませんが、事前評価と継続的な監視で安全性を高めています。
全身麻酔は非常に多く行われている麻酔方法ですが、以下のような症状やリスクが起こる可能性があります。
比較的よくみられる症状: 吐き気・嘔吐、眠気、ふらつき、のどの痛み・違和感、声のかすれ
稀なリスク: 呼吸・循環の異常、不整脈、アレルギー反応、歯牙損傷、誤嚥など
そのため、事前にお薬やアレルギー歴、既往歴を詳しく確認し、リスク評価を行います。起こり得る変化を事前に想定し、絶えず監視しながら迅速に対応できる体制を整えるようにしています。
Q. なぜ手術前に食べたり飲んだりしてはいけないのですか?
全身麻酔中は意識がなくなり、嘔吐物を防ぐ反射も弱くなります。胃の中に食べ物や飲み物が残っていると、逆流して肺に入り、重篤な肺炎(誤嚥性肺炎)を引き起こす危険があります。
そのため、手術前は食事や飲水の時間を厳格に制限させていただきます。
※指示を守っていただけなかった場合、患者さんの安全を第一に考慮し、手術を延期・中止することがあります。
Q. 普段飲んでいる薬は、手術当日も飲んでいいですか?
お薬の種類によって「飲む薬」と「中止する薬」が異なります。必ず事前にお知らせください。
特に、血液を固まりにくくする薬(抗凝固薬など)や糖尿病治療薬などは、休薬期間や当日の調整が必要です。ご自身の判断で服用を続けたり、中止したりせず、必ず事前のカウンセリングで常用薬をお知らせください。
また、喘息の吸入薬は手術前には症状が無いからといって中止しないでください。吸入薬は安全な全身麻酔のために必須です。
Q. 手術当日は一人で帰れますか?
全身麻酔による日帰り手術では、帰宅時に付き添いの方のお迎えをお願いしています。
十分に目が覚めているように感じても、麻酔薬などの影響が残っている可能性があります。手術当日は、ご自身で車・バイク・自転車を運転することもできません。
帰宅された後も、手術当日の夜は、お一人で過ごさないようにしてください。必ずご家族など成人の方と一緒にお過ごしください。
おひとりでお住まいの方や、お迎えに来ていただける方がいない場合には、手術後、開放型病床制度連携病院である康生会武田病院での一泊入院をしていただくことで当院での全身麻酔手術が可能となります。
Q. 全身麻酔が怖いのですが……
全身麻酔に不安を感じることは珍しいことではありません。
「麻酔が効かなかったらどうしよう」
「途中で目が覚めない?」
「手術が終わっても目が覚めなかったら?」
と心配される方もいらっしゃいます。
全身麻酔中は、麻酔科医が患者さんの状態を継続して確認し、手術の進行に合わせて麻酔薬を調整しています。
気になることや過去の麻酔で困った経験がある場合には、事前に遠慮なくお知らせください。
