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気管支喘息と鼻の病気
One Airway One disease
気道はひとつにつながっている~病気もあわせて診ていく必要がある
鼻・副鼻腔からのど、気管支まで続く「空気の通り道」は、ひとつにつながっています。
通常、鼻や副鼻腔などの上気道は耳鼻咽喉科、気管支などの下気道は呼吸器内科が診療します。しかし、アレルギー性鼻炎、好酸球性副鼻腔炎、気管支喘息などはそれぞれ独立した病気ではなく、共通する炎症を背景として合併することがあります。
鼻の治療を続けてもなかなか症状が落ち着かない場合には喘息が隠れていないか、逆に喘息を治療していても咳や呼吸症状が安定しない場合には、アレルギー性鼻炎や副鼻腔炎が合併していないかを確認することが大切です。
当院では、鼻・副鼻腔から気管支までをひとつの気道として考える One Airway One Disease の考え方を大切にしています。
気管支喘息とは
気管支喘息は、空気の通り道である気管支に慢性的な炎症が起こり、気道が過敏になる病気です。
「ゼーゼー」「ヒューヒュー」という喘鳴だけでなく、長引く咳、息苦しさ、胸が締めつけられる感じなど、症状はさまざまです。夜間から明け方、季節の変わり目、風邪をひいたとき、運動時などに症状が悪化することがあります。
また、咳だけが続き、明らかな喘鳴を伴わない咳喘息もあります。
喘息では症状がない時期にも気道の炎症が残っていることがあるため、症状が出たときだけ気管支を広げるのではなく、気道の炎症を継続的にコントロールすることが治療の基本になります。
喘息の診断・検査
喘息はひとつの検査だけで診断するものではなく、症状やこれまでの経過に加えて、必要に応じて呼吸機能検査、呼気NO(FeNO)検査、胸部レントゲン検査、血液中の好酸球数、IgEやアレルギー検査などを組み合わせて評価します。
一方、「咳が長く続く=喘息」とは限りません。
アレルギー性鼻炎、副鼻腔炎、後鼻漏など鼻・副鼻腔に原因がある咳もあります。そのため当院では、必要に応じて耳鼻咽喉科医が鼻内視鏡検査や副鼻腔CTなども行い、鼻・副鼻腔と気管支の両方から咳の原因を考えます。
喘息治療の中心となる「吸入薬」
喘息の治療では、薬剤を気道へ直接届けることができる吸入薬が中心となります。
吸入薬にはいくつかの種類があり、それぞれ役割が異なります。
・ICS:吸入ステロイド薬
喘息治療の中心となる薬剤です。
「ステロイド」という名前から心配される方もおられますが、吸入薬は気道へ直接薬剤を届けることで、気道の炎症を抑えることを目的としています。
症状があるときだけ使うのではなく、炎症をコントロールし、喘息の増悪を防ぐために継続して使用することが重要です。
・LABA:長時間作用性β2刺激薬
気管支を長時間広げ、呼吸を楽にする薬です。
喘息ではLABAを単独で使用するのではなく、基本的にICSと組み合わせて使用します。現在はICSとLABAをひとつの吸入器にした配合剤が広く使われています。
・LAMA:長時間作用性抗コリン薬
気道のムスカリン受容体に作用し、気管支の収縮を抑えて気道を広げるとともに、気道分泌を抑える作用をもつ薬です。
ICS/LABAで十分なコントロールが得られない場合などに追加されることがあり、現在ではICS+LABA+LAMAの3剤をひとつの吸入器にしたトリプル製剤も使用されています。
・SABA:短時間作用型β2刺激薬(急性増悪時の吸入薬)
喘息症状が出たときに、速やかに気管支を広げるために使用する吸入薬もあります。
また、使用する薬剤によっては、ICS/ホルモテロール配合剤を毎日の長期管理と症状出現時の両方に使用する治療法(SMART療法)があります。
どの吸入薬が適しているかは、喘息の重症度や症状だけでなく、年齢、呼吸機能、吸入する力、ライフスタイルなどによっても異なります。
アレルギー性鼻炎と喘息の合併
喘息患者さんの70%がアレルギー性鼻炎を持っているといわれています。また、アレルギー性鼻炎の方は約30%が喘息をもっていると言われています。
アレルギー性鼻炎の治療により喘息が急に増悪して外来を受診する回数が減ったという報告もあります。
アレルギー性鼻炎の方で、夜から明け方にかけての咳が気になる方は一度呼吸機能の検査をうけることをすすめます。
また、喘息の方で鼻がつまる、のどに鼻みずが落ちてきて咳になるという症状をお持ちの方は副鼻腔CTなどで副鼻腔炎の有無、鼻内の検査によりアレルギー性鼻炎の状態を確認して治療にあたるほうが良いと思われます。
重症喘息の治療薬の一つであるオマリズマブの投与によって季節性アレルギー性鼻炎の症状も改善したという報告もみられます。
私自身は喘息に対して処方されている吸入ステロイドは「吸ったあと鼻からだしてください」とお話しします。鼻の中でアレルギー反応による鼻汁を産生したり肥厚して鼻づまりの原因となる「下鼻甲介」の後方は点鼻ステロイド薬が届きづらい場所ですが、吸入薬を鼻から呼出していただくことで下鼻甲介後方へ薬剤を届けることができるようになります。
好酸球性副鼻腔炎と喘息の合併
喘息を持っている方で「においがしない」「鼻の調子があまりよくない」方は一度副鼻腔のCTを撮影するべきと考えます。好酸球性副鼻腔炎という難治性の副鼻腔炎は気管支喘息との合併が重症度のカギとなりますし、喘息の方にとっても副鼻腔炎を合併しているかしていないかをチェックすることはより効果的な治療方法を選択するために大変重要なことです。副鼻腔炎の手術をすることで喘息症状が改善する方、喘息の治療薬である吸入ステロイド薬を「口から吸って鼻から出す」方法で鼻の中のポリープが小さくなって鼻の症状が改善するケースも見られます。
好酸球性副鼻腔炎の典型的な方は鼻の中にポリープが充満していますが、特に若年層などはポリープのみえない好酸球性副鼻腔炎の方も多く(「30歳以下の好酸球性副鼻腔炎ではポリープ発見率は約30%」:2018年日本耳鼻咽喉科学会、日本アレルギー学会で報告)、「耳鼻咽喉科でのカメラの検査(ファイバースコープ)でポリープが無いから副鼻腔炎ではないですと診断された」にもかかわらず鼻症状が続いている喘息をお持ちの方は要注意です。その場合は一度CT検査をうけられることをお勧めします。
当院で行うAirway Medicine and Surgery
当院は耳鼻咽喉科・アレルギー専門医が院長を務めていますが、これまで吸入ステロイド経鼻呼出法の「生みの親」である安場広高医師に師事し、共同して副鼻腔炎と合併する喘息の診療を行ってまいりました。火曜日午前、土曜日午後には呼吸器内科・アレルギー専門医(大阪府済生会中津病院副院長・呼吸器内科部長 上田哲也医師、田附興風会医学研究所北野病院呼吸器内科部長 丸毛聡医師)による「咳・ぜんそく外来」を開設し、「働く世代」の喘息、「鼻の調子も悪い」喘息で困られている方の治療に力を入れています。
喘息の方の好酸球性副鼻腔炎に対しては手術も含めた積極的な治療、その後の喘息の治療を副鼻腔炎の治療に活かしながら、
「副鼻腔炎を制御すれば喘息も制御できる」
「喘息を制御すれば副鼻腔炎も制御できる」
というコンセプトで治療にあたっています。
ひとつのクリニックで鼻副鼻腔炎の専門医と喘息の専門医が共に診療を行うことで、合併する空気の通り道のアレルギー疾患を克服していくことができるようにしたいと考えています。
気になる方は一度受診してご相談ください。
