omalizumab重症・最重症スギ花粉症に対する注射治療

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抗IgE抗体 オマリズマブ(ゾレア)

抗ヒスタミン薬や鼻噴霧ステロイドといった、薬による治療を行っても飛散するスギ花粉の量にあわせてくしゃみ、鼻水、鼻づまりといった症状が強くなり、「重症」「最重症」といった状況になってしまう場合、生物学的製剤である抗IgE抗体オマリズマブ(ゾレア®)の皮下注射による治療が2020年より行われるようになっています。

IgE

スギ花粉が鼻の中に入り、粘膜に付着すると、体に備わっている免疫防御システムにより「抗原」「アレルゲン」として認識され、「敵」の情報を伝え、IgEという免疫グロブリンを作ることでスギ花粉と戦おうとします。スギ花粉を毎年吸い続けることで「情報」の蓄積により「感作」されてスギ花粉専用のIgE(スギ花粉特異的IgE)が身体の中で産生されるようになり、それらのIgEは肥満細胞の表面に並んで待ち構えています。このIgEにスギ花粉が結合することで「スイッチ」が入り、肥満細胞からヒスタミン、ロイコトリエンなどの生理活性物質が大量に放出されてしまいます。これらの生理活性物質が神経や分泌物を出す鼻腺、血管などにある受容体に結合することで、くしゃみ、鼻汁、鼻づまりなどをひきおこします。
つまり、スギ花粉が鼻の中に入ってきた時に迎え撃つ役割のIgEをどのくらい持っているかがスギ花粉症の最も重要な入口のカギとなります。

抗IgE抗体治療

昨今、様々な分野において、抗体治療、バイオ治療と呼ばれる治療が盛んにおこなわれるようになってきています。病気をひきおこす際には様々な化学反応が生体内でおこり連鎖していくのですが、その連鎖を引き起こす物質の産生や活動をブロックする「抗体」を開発して投与し、病気の流れを止めてしまう方法による治療です。アレルギーの分野では、気管支喘息の治療薬としての抗体治療が15年前から認可され多くの患者さんの喘息症状の改善に寄与してきました。その中でも最も古くから使われてきて効果が証明されている薬が、今回最重症スギ花粉症の治療薬として認可された、抗IgE抗体 オマリズマブ(薬剤名:ゾレア®)です。
血液中のIgEにオマリズマブが結合することで肥満細胞にIgEが結合できなくなり、ヒスタミンなどを放出する「スイッチ」が入らないようにするという機序です。従来の内服薬は放出されたヒスタミンによる症状を抑えるものですが、その上流でアレルギー反応そのものを起こさせない薬といえます。

血液中の総IgE値、体重をもとに投与量が計算され、2週間もしくは4週間おきに1~4本の注射を皮下注射する治療となります。
効果に関しては鼻症状、眼の症状、共に花粉飛散ピーク期であっても安定して良好な状態を維持できたとする報告があります。

治療までの流れ

この皮下注射による治療は既存の治療を行っても症状が酷い、「重症」「最重症」のスギ花粉症の方に限定した治療です。そのため治療開始までには高いハードルがあります。
12歳以上が対象です。
② 初回診察にて前シーズンのスギ花粉症症状が重症・もしくは最重症であることを確認します。症状が副鼻腔炎などの他の病気によってひきおこされているものでないかを、CT検査やファイバースコープ検査などで確認することもあります。
1週間以上、抗ヒスタミン薬、鼻噴霧ステロイド薬による治療を行います。
④ 再来院の際のスギ花粉症の症状がガイドライン上「重症」もしくは「最重症」であることを確認します。
採血を行い、スギIgE値、総IgE値を測定します。(以前に血液検査をされたことがある方であっても血液検査が必要となります。)
⑥ 数日後に採血結果を確認して、投与可能かどうか、投与量と投与間隔が決まります。(←当クリニックでは電話で確認可能です)
⑦ 注射の日を予約、来院してゾレア®の注射を開始
ここまでステップを踏んで初めて注射が可能となります。
スギ特異的IgE値がクラス3以上、総IgE値が30~1500IU/mLであることが絶対条件です。(IgE値が高すぎる人は必要な薬剤量が増えすぎるので逆に投与できません)
体重と総IgE値よりゾレア®の投与量と投与間隔が決められます。総IgE値が高く、体重が重い方はより多くの注射を必要とする計算です。(体重がより重い方は総IgE値が1500IU/mL以下であっても必要投与量が限界量を超えてしまうことにより、「投与不可」となることもあります。)

初回診察の時に血液検査をしておくことで、来院回数を極力減らして治療を開始することが可能となります。
注射の日は薬剤の準備、副反応の観察などを含め1時間程度かかる見込みです。

製薬会社(ノバルティス)のホームページに詳しい内容が記載されています。

[補足]オマリズマブ(ゾレア)による治療に関して2022年の日本鼻科学会シンポジウムで講演した内容のPDFが以下のリンクよりダウンロードできます。

抗IgE抗体療法 その適応と実際

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