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果物を食べると口の中が痒くなる…

生の果物、リンゴ、モモ、メロン、スイカを食べた時に口が痒くなったり、のどが腫れるような感覚になってしまう症状がある、でもアップルパイは大丈夫…

このような症状がある方は「口腔アレルギー症候群(Oral Allergy Syndrome: OAS)」「花粉・食物アレルギー症候群(Pollen-Food Allergy Syndrome: PFAS)」と呼ばれる、花粉症と合併する一種の食物アレルギーである可能性が高いです。20~30歳代の女性に多くみられますが、10歳代の男性にもよくみられます。

花粉症は、花粉の表面にある「抗原」と呼ばれるたんぱく質の一種に対する「抗体」が体の中で作られ、抗原が入ってきた時に抗体が出動して抗原を排除しようと「戦う」ことで、炎症がおこり、さまざまな症状が出現します。このたんぱく質には共通抗原性という、いわゆる「似たような構造、仲間」があるため、特定の花粉の「仲間」のたんぱく質を持つ果物を食べた時に、「花粉が来た!」と抗体が出動してアレルギー反応をおこしてしまうものです。このたんぱく質は熱に弱いものが多いため、「生のリンゴは口が痒くなるけどアップルパイは大丈夫」といったことがおこります。

ハンノキ・シラカンバ花粉症と口腔アレルギー

口腔アレルギー症候群をひきおこす花粉症で最も有名なものはカバノキ科のハンノキ、シラカンバによるものです。
シラカンバは「白樺」、北海道や信州に多い樹木です。天然杉の分布の北限が青森県のため、北海道ではスギ花粉症の方はほとんどいないのですが、かわりにシラカンバ花粉症の方が多く、口腔アレルギーの方も多いです。また、関西では六甲山域にオオバヤシャブシというハンノキの仲間が群生し、その他の地域でもカバノキ科の樹木はありますので、ハンノキ花粉症を発症することがあります。(ハンノキ花粉症の季節はスギより少し早い程度ですのでスギ花粉症と区別がつかず、スギ花粉症だと思われている方も多いです。)
このハンノキ、シラカンバアレルギーの主体となっている抗原たんぱく質Bet v 1はPR-10というグループに属しており、同じグループ(仲間)には数多くの抗原たんぱく質が所属しています。
Mal d 1(りんご)
Pra a 1(さくらんぼ)
Pyr c 1(洋ナシ)
Api g 1(セロリ)
Dau c 1(人参)
Gly m 4(大豆、主に豆乳)
これらの仲間を食べた時に、ハンノキ・シラカンバに対する免疫が作働してしまい、口腔粘膜でアレルギー反応がおこるわけです。体調によって症状が出たり出なかったりすることもあります。また、豆腐は食べられるのに、「くみ上げ湯葉」「とろける生豆腐」で口の中が痒くなったことがある、という方もいます。
診断には血液検査にてハンノキ属の特異的IgEを測定することが有用です。
体調や摂取状況によって症状が強く出て呼吸困難をひきおこすこともありますので、抗アレルギー薬の内服、原因食物の摂取に注意する、などの対応が必要となります。

イネ科・ブタクサ・ヨモギの花粉症

イネ科の花粉症で口腔アレルギーをひきおこす果物の代表はウリ科のメロンやスイカです。
他、キウイやセロリ、タマネギ、オレンジなどでもおこることがあります。

ブタクサ、ヨモギなどのキク科の花粉症では
ブタクサ→スイカ、メロン、キュウリ、バナナ
ヨモギ→ニンジン、セロリ、ピーナッツ、ピスタチオ、ヘーゼルナッツ、キウイ、コリアンダー、クミン、マスタード

といった食物の摂取でアレルギーがでることがあります。

食物アレルギー診療ガイドライン2021より
(食物アレルギー診療ガイドライン2021)

当院での口腔アレルギー症候群の検査

成人の口腔アレルギー症候群の診断に関しては、花粉症の診断とあわせて行うことが多く、当院では血液検査による特異的IgEの測定を行っています。
食物アレルギーの診断、治療は小児と成人では異なります。小児期の食物アレルギーの診断と管理はぜひ小児科を受診してご相談ください。
また、特定の食物のみでおこるアレルギーなど、IgEの測定では診断できない場合に行うプリックテストは現在行っておりませんため、更に詳しい検査をご希望の場合は他の医療機関をご紹介いたします。

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